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TEAC VRDS-701 + AP-701 試聴記


TEAC AP-701 + VRDS-701

ティアックブランドでの久々のVRDSメカを搭載したCDプレーヤーの新製品である、VRDS-701を聴きました。今回はVRDS-701にフィットするパワーアンプのAP-701と合わせての試聴になります。

皆様もご存じだとは思いますが、ティアックにはハイエンドオーディオのエソテリックブランドと普及価格帯のティアックブランドの二つのブランドがあります。
ティアックは1953年(昭和28年)創業の老舗オーディオブランドです。一般の家庭用オーディオ機器の他に、TASCAMブランドで業務用オーディオ機器も手掛けております。
エソテリックは2004年(平成16年)にティアックから独立して創業した、日本を代表する高級オーディオブランドです。同じ会社の中で、TEAC/ESOTERIC/TASCAMと、ニーズと用途に応じてブランドを使い分ける戦略は他社ではあまりありませんが、それぞれ製品開発の方向性がはっきり分かれているせいか、うまく機能しているように思います。
現在のTEACブランドはビギナー向けの300シリーズと、ミドルレンジの500シリーズ、そして2021年からは、クオリティにこだわった横幅444mmのフルサイズコンポの700シリーズと、3つのシリーズで成り立っています。

家庭用オーディオ機器も、ビギナー向けのお手軽品か、マニア向けの高級品化という2極分化の傾向が強くなっています。オーディオ業界だけではなく、全ての業界でこの傾向はみられると思いますが、中間層の製品が少なくなっているのは事実だと思います。それだけ所得格差が広がっているということなのでしょう。

TEAC AP-701

AP-701はオランダHypex社のNCoreモジュールを採用したパワーアンプで、このNCoreモジュールはHypex社内でティアック用にカスタマイズされた特注品とのことです。これを左右独立で2基搭載したフルバランス構成となっており、チャンネルあたり270W(4Ω)、170W(8Ω)の出力をギャランティしています。2基のトロイダルコアトランスと2基のNcoreモジュールを搭載し、入力段から出力段に至るまで一貫したデュアルモノーラル構成の贅沢な回路を採用しました。それぞれのチャンネルがモノーラルで完結されるデュアルモノーラル構成は、L/R信号によるお互いの干渉を防ぎ、優れたチャンネルセパレーションを実現。音場感や立体感など豊かな音楽表現が可能です。

TEAC VRDS-701

VRDS-701は20年ぶりに、ティアックブランドで出す久々のV.R.D.S.メカニズムを採用したCDプレーヤーです。V.R.D.S.はVibration-Free Rigid Disc-Clamping Systemの略で、CDを同径のアルミニウム製ターンテーブルでクランピングし、慣性質量を増大させることで回転を安定させ、ディスク自身の回転振動やメカニズムの不要振動を低減させるティアック独自のCDドライブメカニズムです。現在はエソテリックブランドのSACD/CDプレーヤーでこのドライブメカニズムが継承されていますが、今回ティアックブランドで新たなV.R.D.S.メカニズムを開発してVRDS-701に搭載してきました。
エソテリックで搭載しているような堅牢なドライブメカニズムではないですが、VRDS-701に搭載されたドライブメカニズムは振動を抑え込む方法ではなく、振動をうまく逃がしたり、吸収したりしながら「いなす」工夫がされています。ある意味エソテリックよりも細かい工夫や発想の転換があるのかも知れません。
もう一つの特徴として、TEAC-QVCS (Quad Volume Control System)というL/R,+/-の4回路構成の可変ゲインアンプ型ボリウムで、–95dBから+24dBまで0.5dBずつの非常に細かいアナログ音量調節が可能です。つまりCDプレーヤーとプリアンプのボリウム機能が備わっているわけです。またRDOT-NEOによる2xFs/4xFs/8xFsへのアップコンバート機能も装備しております。試してみるとアップコンバートを可変するごとに滑らかさが増していく感じがあって、積極的に使いたい機能だと思いました。それと今回は試していませんが、10MHzの外部クロック入力もあり、これも接続すると滲みの少ない極上のサウンドが楽しめることは経験上間違いありません。
VRDS-701には兄弟機としてDAC部分を割愛したCDトランスポートのVRDS-701T(税込275,000円)もラインナップされています。こちらの方はDAC部分が必要ないため、トランスポートに特化した設計になっており、限られたスペースでは難しかった大型パーツも投入して、より一層のクオリティアップが図られています。単体で優秀なD/Aコンバーターをお使いの方は、こちらとの組み合わせお勧めいたします。

試聴はCDプレーヤーのVRDS-701にAP-701を接続して行ないました。
先程も申し上げましたが、コンパクトなサイズ感が非常に良く、オーディオ機器として主張する感じがあまりありません。このクラスの機器ですと、組み合わせるスピーカーもそれほど大型のものではなく。ブックシェルフ型か、小形のトールボーイ型あたりになるかと思います。
今回はEPOSのES-14Nで行ないました。

ウィリアムス浩子さんのヴォーカルは、適度なウェット感の中にも暖かみのあるサウンドが楽しめました。ヨーヨーマのSimply Baroque Ⅱはバロックチェロの滑らかさと響きの良さが素晴らしかったです。カウントベイシー・オーケストラは、ビッグバンドのスケール感とホーンセクションのブリリアントな響きが魅力的でした。

一通り試聴が終わった段階での印象としては、価格相応のクオリティを持っていると言える感じでした。一般家庭で、音量もそれほど上げない環境であれば、この組み合わせでそれほど不満は出ないのではないかと思います。それと、VRDS-701に装備されているTEAC-QVCSというボリウムコントロールが、0.5dBステップで細かい音量調節できて、ボリウムツマミの感触や出てくるサウンドのクオリティもなかなかハイレベルな印象を受けました。

CDディスク再生に特化すれば、VRDS-701+AP-701+スピーカーの組合せで、十分音楽鑑賞は楽しめると思います。あとはスピーカーが持ち合わせている音色の方向性と、ご自身が目指している好みの方向性が合致していれば、満足のいくシステムとなるのではないでしょうか。

昨今の世界情勢等を考えると、個人の趣味に資金をつぎ込むのも何となく気が引ける世の中ですが、それぞれの「心の安息」「心の平安」を保つのも現代を生き抜く知恵の一つとして、重要なファクターになり得るものと思います。それぞれのできる範囲で楽しむというゆとりを持ちたいものですね。