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TechDAS AIR FORCE V Premium 試聴記


ニュース&イベント情報でもご案内いたしましたように、1年間の限定展示をしているAIR FORCE V Premiumですが、果たしてそのポテンシャルはどうなのか…? 誰しも気になるところでありましょう。そこでセッティングを含めて試してみたいと思います。

まず驚いたのは外装の段ボール箱。この機種は外形寸法が312×368mmと小さいため、当然段ボール箱も小さいです。しかし本体とインナープラッターとアウタープラッター、そして電源部/ポンプユニットや細かい付属品を何重にも積み重ねているため、高さがあります。それでいてプレーヤーの総重量は35㎏と結構あるため、開封前の箱を移動するのも一苦労な状態でした。また開封しても積層構造で梱包されているので、一度本体を出してしまうと再度梱包するのにわからなくなりそうでした。まあ段ボールの内側に梱包手順の図が貼ってありますので、それを見ながら作業すればわかりますが、あまりに複雑なのでちょっとビックリしてしまいました。

フローティングと吸着の2本のチューブと電源コネクターが、電源部/エアーポンプに接続されます

組み立て自体は取扱説明書のセッティングの項目を見ながら行えば、そう難しいことはありません。ターンテーブルをセンタースピンドルにセットするための治具なども揃っており、苦労なく組み立てができました。

TechDASのターンテーブルは全てアームレスですので、トーンアームも用意しなければなりません。今回チョイスしたのは地元静岡県沼津市でトーンアームを製造しているGLANZのSタイプで、昨年6月に発売した最新モデルのMH-1000S(10インチ)です。価格は税別790,000円となかなかの高級品ですが、単体トーンアームの需要が少なくなっていて数を作れないので、1本当たりのコストが上がってしまうという状態になっています。私は自宅でこのアームの1グレード下のMH-10Bt(税別390,000円)というモデルを使っていますので、自宅で聴き比べてみましたが、MH-1000Sの切れ味の良さに本当に驚いてしまいました。それだけでなく低域の厚みも増していて、素晴らしいアームだと感心しました。

さてここからは試聴を行っていきます。
アナログレコードと、比較のため同じアルバムのCDディスクまたはSACDディスクも用意しました。まずプレーヤー以外の試聴機材ですが、カートリッジPhasemation/ PP-500、フォノイコライザーアンプ SOULNOTE/ E-1S、SACDプレーヤー ESOTERIC/K-03XD、プリアンプAccuphase/ C-2900、パワーアンプAccuphase/ A-75、スピーカーシステム B&W /802D4で行いました。

➀ CANTATE DOMINO
言わずと知れたオーディショップ御用達のディスクです。propriusレーベルのSACD盤で11曲目の
「Julsang」を聴きました。SACDは教会の空間の広がりが良かったです。レコードは全体の音の柔らかさと透明感のあるきれいな響きが印象的でした。

➁ COOL STRUTTIN’ (SONNY CLARK)
エソテリックのSACDボックス「6 GREAT JAZZ」の中からの1枚です。ブルーノートレーベルのモダンジャズの歴史的名盤を、エソテリックの最新のマスタリング技術を駆使してSACDハイブリッドディスクに収めました。レコードの方は限定生産されたMusic Matters社の45回転盤アナログディスクとの比較です。SACDはリマスタリングの成果もあってバランスの良いサウンドが楽しめます。レコードの方は45回転盤ということもあって、音が太くて重心が低い安定感のあるサウンドが魅力的でした。

➂ WHAT A WONDERFUL WORLD (EVA CASSIDY)
エヴァ・キャシディはアメリカのジャズ・ロック・ソウル系のシンガーで、1996年1月のワシントンのジャズクラブ「ブルース・アレイ」でのライブ録音「Live at Blues Alley」からの1曲です。エヴァはこの年の11月に33歳の若さでガンで逝去してしまったのですが、生前彼女が残したアルバムは2枚しかなく、そのうちの1枚がこのディスクです。後に、このライブアルバムの完全盤「NIGHT BIRD」が発売されて、1996年1月3日のライブの全ての楽曲が楽しめます。CDは「Live at Blues Alley」から、レコードは4枚組の「NIGHT BIRD」からのものです。このCDは録音も良く、ライブアルバムとしてのサウンドバランスは非常にいいです。レコードはベースの音が太くなるのとエコー感が素晴らしくきれいです。そして
➃ MY FAULT (佐山 雅弘)
前回のブログでも使用したディスクですが、CDとレコードが自宅にありますので、聴き比べて見ました。CDは悪くはないのですが、レコードに比べると全体的に音が膨らむ傾向がありました。レコードはベースの音が太く、ピアノのキレは素晴らしかったです。そしてそれぞれの楽器(ピアノ・ベース・ドラムス)のサウンドの縁取りが明快で一つ一つの音にエネルギーを感じます。

電源部/エアーポンプ 背面

こうして聴き比べて見ると、CDまたはSACDにはレコードと違った魅力があるのが分かります。ESOTERICのように過去の名盤をマスタリングからやり直したディスクは、現代のオーディオシステムとの相性は非常に良く、メインソースとして十分に通用すると思います。
アナログレコードの場合は、レコードプレーヤーのグレードによって相当変化しますので一概には言えませんが、今回のようなハイエンドクラスの製品を聴いてみると、同じレコードを再生しても中低域の厚みがありながら、高域のキレの良さと音場空間の再現性が素晴らしいと感じてしまいます。このS/N感の良さと抜群の安定感はTechDASの重量級ターンテーブルのエアーフローティング技術とレコード盤とターンテーブルプラッターを密着させるエアーバキューム技術のなせる業だと思います。
またレコードの世界はCDと比べて、自分で手を加えてクオリティをアップさせることができる部分が多いのが特徴です。カートリッジ・ヘッドシェル・リード線・トーンアーム・ディスクスタビライザー・ターンテーブルシート・トーンアームケーブル…等数え上げたらきりがありません。
CDプレーヤーも出力ケーブル以外にも、CDトランスポートとD/Aコンバーターを分けたり、一部の機器ではマスタークロックジェネレーターを接続したりすればかなり変わりますが、その数は限られています。その代わりデジタルオーディオの世界はサンプリング周波数によって変化するハイレゾの世界がありますね。SACDもハイレゾの一つの形です。
しかしアナログレコードの世界は元々CDのような帯域制限がありませんので、ハイレゾという概念はありません。しかしこうしたハイエンドプレーヤーの音を聴いてみるとハイレゾの世界と違った、低域の太さとか音場感や奥行き感というような音楽空間の中に、奥の深いレコード再生のディープな世界を味わうことができます。

皆様も是非この機会に、ハイグレードなアナログレコードの世界をご堪能下さいませ。