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TAD-E2 (TAD Evolution Two) 試聴記


昨年のインターナショナルオーディオショーで評判だったTAD(テクニカル・オーディオ・ディバイセス)のエボリューションシリーズの新製品スピーカー、TAD Evolution Two (TAD-E2)を聴いています。

このEvolutionシリーズは、フロア型のEvolution One (TAD-E1TX)と、ブックシェルフ型のMicro Evolution One (TAD-ME1)がありますが、両方とも中高域は同軸ユニットとなっています。
今回のTAD-E2はウーハー2発とツイーターという2ウェイ構成で、ツイーターとのクロスオーバー周波数は2.8kHzとしております。ウーハーユニットはダブルですが、下のウーハーは90Hzを境にスロープ特性を変えており、2.5WAY構成としております。

ツイーターユニット自体は従来のEvolution シリーズのツイーター部と同一の25mmベリリウムツイーターを採用しています。振動板形状をコンピューター解析し、新開発のアルミダイキャスト製指向性制御ウェーブガイドにマウントしています。このようにツイーターの指向性をコントロールすることによって、2ウェイシステムでありながら中高域のエネルギー感あふれる再生を可能にしています。

155mm径ウーハーユニットは、豊かでクリアな低域と共にカラレーションのない素直な中低域を再生するため、表面のアラミド織布コーンと裏面の針葉樹パルプ抄紙コーンを別々に成形し、後工程でラミネートした新開発のMACC(Multi-layered Aramid Composite Cone)振動板を採用しました。良好な指向特性を得るために浅型のカーブド形状とし、補強ブレースをコーンネック部に追加したアルミ合金製のデルタブレースにより、スムーズな指向特性と力強い低域再生を両立しています。

エンクロージャーは、高剛性の樺合板ブレースと高内部損失のMDF材パネルを組み合わせることで、高い強度と低い共振を実現した「SILENTエンクロージャー」を採用。またエンクロージャーの底部にポートを配置して開口部を前後へレイアウトし、そのポート内部をホーン形状とすることで、ポートノイズを低減した「Bi-Directional ADPシステム」を採用。クリアでレスポンスのよい中低音を実現したほか、ポートを前後の対称レイアウトにすることで、エンクロージャーを振動させる力も打ち消し、豊かで力強い低域の再生を可能にしました。

こうした素材や特徴を把握した上で、このスピーカーを聴いてみると従来のTADではなかなか表現できなかったようなナチュラルなサウンドが楽しめます。従来のTADのスピーカーは音楽を非常にクールで正確に再現するというイメージがありました。いわゆるモニタースピーカーとしての評価が高かったのだと思います。しかし今回のTAD-E2はモニタースピーカーという感覚はほとんどありません。細かい音を聴くというよりは音楽全体をストレスなく再現するという感じでしょうか。オーディオマニアの方よりも音楽愛好家の方に喜ばれそうなサウンドだと思います。まず音楽を聴いて聴き疲れすることはほとんどありません。いつまでも聴いていたくなるようなサウンドです。それでいて音楽のディティールもちゃんと表現されているのですが、それがわざとらしくなく、耳障りになることがありません。すごくナチュラルなサウンドだなあという感じがします。
このTAD-E2というスピーカーは、(最初からそういうところを狙っていたのかは定かではありませんが)従来のTADスピーカーの音質的系譜から少し路線を変えて、一般家庭で「オーディオを楽しむ」というより、「音楽を聴かせる」ことを優先したような製品のように思います。こうした傾向になった要因には同軸構造のユニットを使わなかったことが影響しているように思います。コスト面から同軸ではないシングルユニットの搭載となったと思いますが、スピーカーのトータルバランス的には、刺激が少なくトゲのない穏やかなサウンドで、特にクラシックファンの方にはいい感触で鳴ってくれると思います。今は日本製スピーカーでキチンと音楽を聴かせる製品は少なくなってしまいましたが、久々にいいスピーカーが登場したなあという感じがします。

ということで、このスピーカーは当店で常設展示をすることにしました。6月初旬には展示分が入荷してきますのでどうぞご期待くださいませ。お好きな音源で、お好きなジャンルでのご試聴を心よりお待ち致しております。