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FYNE AUDIO F-501 試聴記


最近、オーディオ雑誌にちょくちょく掲載されているFYNE AUDIOのトールボーイ型スピーカーシステムF-501を聴かせていただきました。

FYNE AUDIO(ファイン・オーディオ)はイギリス スコットランドに2017年に誕生した新進気鋭のスピーカーメーカーです。若い会社ながら、テクニカルディレクターのポール・ミルズ氏をはじめとする主要スタッフはTANNOY社で要職についていた人ばかりで、その知識と経験を生かしてデビュー作から完成度の高い製品をリリースしてきました。

製品ラインナップは初心者向けのローコストモデルから300万円クラスのハイエンドモデルまで幅広く用意されていますが、その中で中堅クラスのF-500シリーズは驚異のコストパフォーマンスで注目を集めています。確かに、ちょっと見にはTANNOYのデュアルコンセントリックユニットとよく似ていますが、二つの大きなテクノロジーでTANNOYを凌駕しています。

一つはISO FLARE(アイソフレア)で、デュアルコンセントリックユニットの高域ユニットのホーンに12枚のフィンが付きました。このフィンがイコライザーの役目をして、高音域エネルギーを拡散と放射を均等に行って、指向特性を改善するとのことです。つまりはこのフィンがないTANNOYは指向性が鋭く、スイートスポットが狭いという傾向があるようです。
私自身あまりそういう認識がなかったので、ちょっと驚きでした。
もう一つはFYNEFLUTE(ファインフルート)というスピーカーエッジの改良です。単純な湾曲エッジでは材質によって固有の周波数共振が発生しますが、それを高度なコンピュータ解析により溝(フルート)を刻み込ませています。これによりエッジに起因する共振を抑え込んでいます。

ユニット以外のテクノロジーとしては、エンクロージャー底面に設けられたBASSTRAX TRACTRIX(べーストラックス・トラクトリックス)というディフューザーを設けています。元来造船工学で開発された技術ですが、エンクロージャー底面に下向きに配置されたバスレフダクトの開口部にトラクトリックスカーブに加工された円錐状のディフューザーを設置。90度向きを変えて全方向に放射することにより、クリアで力強い低音再生が可能になりました。この技術をウーハー領域に応用したのは初めてであり、特許出願中ということでこのシリーズ最大のメリットと言っていいかも知れません。

これらの特徴を持つ意欲的な製品でありながら、リーズナブルな価格設定で驚異的なコストパフォーマンスを発揮いたします。今回試聴したF-501はペア¥198,000で、先日当店に導入したSonus faberのブックシェルフスピーカーSONETTO Ⅰと同価格です。F-501は15㎝径のデュアルコンセントリックユニットと同径のウーハーユニットの2.5wayスピーカーシステムですが、この上のモデルに20㎝径のユニットを搭載したF-502があり、そちらでもペア¥270,000というちょっと信じられない価格です。

そこで肝心の音質ですが、最初はあまり期待していなかったのですが、結論から言うとなかなかのものでした。アンプはAccuphase のプリメインアンプE-480(¥550,000)、CDプレーヤーにESOTERIC K-05X’S(¥650,000)でスタートです。
最初、CD→アンプ間はACOUSTIC REVIVEのPC-Triple Cのバランスケーブルを使っていたのですが、スピーカーケーブルはOrtofonの昔のケーブル(6.7N-SPK500)で試聴しました。可もなく不可もなくという感じで特に印象に残る感じはありませんでした。そこでスピーカーケーブルもACOUSTIC REVIVEのPC-Triple Cのものに替えたら・・・激変しました。音の切れ味や音場の再現性などが抜群に良くなりました。価格の安さからちょっとナメていたところが正直ありましたが「ああ、これはハイエンドスピーカーだ!」と認識を新たにしました。
ついでに、この前のACOUSTIC REVIVEのイベントで抜群の効果があったバイワイヤリングアダプターを装着してみました。低域の力感が増して高域のキレの良さが更に際立ちました。また楽曲の録音状況によっては低域過多というかゆるくなるケースがありましたので、スピーカーの下にボード(今回は御影石ボード)を敷いてみたところ、見事にシマリが出てきました。こうしたケーブルやアクセサリー類を追加したときの変化の仕方はまさにハイエンドオーディオそのものでした。

TANNOYで出ているRevolution XT シリーズはF-501と同じ口径で同じユニットレイアウトのものがありますが、価格はペア¥240,000です。Revolution XT シリーズは2015年の発売ですので、FYNE AUDIOはこれを土台に開発を進めたものと思いますが、ユニットの改良ポイントやエンクロージャー底面のディフューザーなどTANNOYより数段凝った技術的アドバンテージを感じます。Revolution XT 6Fはこちらで音を聴いていませんので論評は避けますが、価格も含めた総合的な魅力度はF-501に軍配が上がりそうです。

FYNE AUDIOの製品はアクシスが輸入元になって日本市場に投入されているのは知っていましたが、F-500シリーズは価格が安いこともあってあまり興味は持っていませんでした。今回じっくり聴かせていただいて見る目が変わりました。特にF-500シリーズは価格がリーズナブルなので、若い方でこれからオーディオを始めようという方にはいい選択になると思います。日本のオーディオ業界もハイエンド化が進行して久しいですが、その一方で次の世代のお客様に喜んで使っていただけるような製品をご紹介することが今一番求められていることでしょう。こうしたコストパフォーマンスの高い優秀な製品を当店としても積極的にアピールしていきたいと思った今回の試聴でした。