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Accuphase DP-770 試聴記


昨年の10月に発売になりました、アキュフェーズのSACDプレーヤー、DP-770(税別定価1,370,000円)のデモ機が入荷してきましたので、試聴をいたしました。

DP-770は、2018年6月に発売になったDP-750の後継モデルです。アキュフェーズの場合はどの製品もそうですが、前作モデルをベースに、細かいパーツの変更や回路基板の効率化などを慎重に検討して、外観を含めて、大まかな部分ではあまり変化のない製品に仕上げてきます。ところが実際に音を聴いてみますと、しっかりと音質的な進化を感じられるほどにブラッシュアップしたサウンドを聴かせてくれます。こうした正常進化型の製品開発はアキュフェーズの最も得意とする部分であって、長年のアキュフェーズの製品開発の基本姿勢といえるスピリットでありましょう。
このDP-770も、ベースの部分はDP-750とそれほど違いのあるものではないように思えるのですが、細かい部分の詰めによって、S/N比やダイナミックレンジが1dB向上したりして、こうした細かい改良がトータルの音質的なクオリティアップにつながっているのは間違いのない事実であると思います。
DP-770もDP-750との直接比較をしてはいないのですが、その音質的アドバンテージは感じることができました。DP-770は上位モデルかつ最高位のセパレート型SACDプレーヤーのDP-1000/DC-1000のテクノロジーを受け継いだ一体型SACDプレーヤーの意欲作として、高い評価を受けています。中でもSACD/CDドライブメカニズムはDP-1000と遜色ない重量級メカニズムとなっております。また8㎜厚のボトムプレートに、固定フレームを介してSACD/CDドライブを搭載した低重心構造により、常に安定した動作を可能にしました。
こうした些細な改良ポイントが積み重なって、全体の完成度の高さにつながっていくわけですね。

アキュフェーズのSACD/CDプレーヤーの音質的特徴というと、決して派手さはないけれども、落ち着いた、深みのあるサウンドという印象を持つのですが、このDP-770も基本的な傾向としては同じ方向であると思います。

同じくオーディオのハイエンドブランドのエソテリックのSACDプレーヤーと比べると、その音色的特徴はかなり違う印象を持たれるのではないでしょうか。エソテリックのほうが「力強く、骨太で男性的な」印象を持たれる方も多いのではないかと思います。一方アキュフェーズは「しなやかで、落ち着きがあり女性的な」印象を受けるのは私だけではないと思います。

私の個人的な印象としましては、ジャズ・フュージョン系の音楽はエソテリックのほうが好ましく、クラシック全般や女性ヴォーカル等はアキュフェーズのほうが好まれるような気がします。但し、このあたりはそれぞれ個人の好みの部分がありますし、お使いのアンプやスピーカーによっても変化していきますので、できれば店頭で実際に音を聴いてみたほうがよろしいかと思います。

試聴ディスクの4枚

こうした印象を持ったアキュフェーズのDP-770ですが、先月から展示を開始したウェルフロート・ダブルに載せて再生してみると、驚くべき変化がありました。まず、女性的と思われていた音色が、見事に変化しました。
試聴は以下の4枚のディスクで比較をしてみました。
前回のブログの試聴ディスクと重なる部分もありますが、演奏空間の再現性や空気感の違いを検証したかったのであえて同じディスクをチョイスいたしました。

① バッハ / ゴールドベルグ変奏曲  キース・ジャレット
② カンターテ・ドミノ  オスカル・モメット合唱団
③ MY ROOM side4   ウィリアムス浩子
④ Crème de la Crème  The Higher You Rise

① キース・ジャレットのゴールドベルグ変奏曲は、穏やかな佇まいの中でのハープシコードが静かに響く印象でしたが、ウェルフロート・ダブルに載せると、その響きの繊細さと透明感が増して、その臨場感がより一層高まりました。
② カンターテ・ドミノは教会の天井の高さを十分感じられる響きの美しさがありましたが、ウェルフロート・ダブルに載せると、その空間の広がりと響きの緻密さがより一層強くなりました。
③ MY ROOM side4ではゆったりと優しく響くヴォーカルが魅力的でしたが、ウェルフロート・ダブルに載せると、ヴォーカルの口元の確かさと、ギターのナチュラルな響きが素晴らしかったです。
④ The Higher You Riseはゴキゲンなフュージョンサウンドが楽しめましたが、ウェルフロート・ダブルに載せると、その演奏空間の広さがが際立ち、演奏のエネルギー感というか熱量が際立つものがありました。

Accuphase DP-770 + WELLFLOAT Double

以上のようにウェルフロート・ダブルに載せることによって穏やかだったDP-770のサウンドがキリッと引き締まった印象が強くなりました。この変化はアキュフェーズ社の開発陣にとっては好ましい方向かどうかはわかりませんが、エソテリックのような力強い男性的なサウンドに近づいたことは間違いないと思います。
しかしながら、本来のアキュフェーズが持っている、ある意味「女性的でしなやかな」キャラクターを薄める結果になるような気もします。このあたりはお使いになっているユーザーの方の「好みの方向性」によって評価は分かれるような気がします。しかし私の個人的な評価としては、思わずニヤリとしてしまうほどの魅力的なサウンドに昇華したと感じてしまいました。

ESOTERIC K-05XD + WELLFLOAT Double

現在、当店で常設展示をしている高級品のSACDプレーヤーはエソテリックのK-05XD(税別950,000円)ですので、これとの比較もしてみました。
エソテリックは先ほども述べましたように、男性的なサウンドが特徴ですが、製品の価格帯がアキュフェーズのほうが40万円ほど高いので、クオリティの違いはやはりありますが、ウェルフロート・ダブルに載せると確かに音は締まります。しかしアキュフェーズほどの変化量は感じられませんでした。
この変化量の違いをどう捉えるかは難しい問題ですが、私が思うにはエソテリックは独自のVRDSメカニズムによるキャラクターが立っていて、他の音質的影響力が相対的に少ないのではないかと思いました。そういう意味ではある程度完成された製品という見方もできますし、それだけ個性的な製品だとも言えるかもしれませんね。