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Accuphase A-80 試聴記


Accuphase A-80

9月某日に、アキュフェーズの営業の方がお越しになって、A級パワーアンプA-75の後継モデルの「A-80」を聴かせていただきました。
外観はほかのアキュフェーズ製品と変わらず、ちょっと見にはデザインの変化が分からなく、世の旦那様方には製品を入れ替えても奥方様にバレにくい、わずかの違いしかありません。こうした長年のちょっとしたデザイン変更にとどめつつ、洗練されたビジュアルは非常に完成度の高い領域に達している感があります。
そしてそのアンプとしての完成度は、当然デザインだけの違いではなく、音質的なクオリティの差となって、ユーザーの高揚感や満足感となってユーザーの心を満たしてくれるのでありました。
このA-80パワーアンプも他のアキュフェーズ製品と同じく、前作モデルをベースにした「正常進化型アップデート」により、変化の方向性に違和感はなく、確実にブラッシュアップしていることが誰の耳で聴いてもわかるほどの違いとなって認識されます。

この時に聴いた印象は確かに残っているのですが、今回は当店の常設パワーアンプP-7500との比較を入念にしたいため、無理を言ってもう一度お借りして、音質及び音色の違いを検証してみたいと思います。

その時の第一印象としては、「S/N感の良さ」でした。A級アンプの特徴である滑らかさと温度感の高さが感じられながら、同時に切れ味の良さも感じられるという、相反する要素が同時に味わえる異次元の体験をいたしました。A級アンプというとどうしても暖かみとやさしさのある「マイルドな音色」というイメージですが、このA-80はその音色に「解像度」も合わせ持つという離れ業をやってのけました。この解像度の高さというのもS/Nの良さからきているものと思われます。

A-80の開発の裏には昨年10月に発売した、アキュフェーズ創業50周年記念モデルの一つでもあるモノラルパワーアンプA-300の開発が大きく関与しているのは間違いありません。2台で297万円(税込)という現行のアキュフェーズパワーアンプとしては最高峰のモデルです。この製品の開発で採用された新技術が応用されて、A-80に組み込まれています。こうした上位モデルからのダウンサイジングされた技術の応用は、アキュフェーズの最も得意とするところであり、製品の信頼性の面でも大きく寄与しています。

MOS-FETによる10パラレルプッシュプルA級動作で、65W/ch(8Ω)、130W/ch(4Ω)、260W/ch(2Ω)というリニアな出力を実現いたします。また電源部は高効率大型トロイダルトランスと、アキュフェーズ史上最大の71Ⅴ120,000μFのフィルターコンデンサー採用で余裕の充実度です。
その他、信号入力部がバランス回路で構成された『インスツルメンテーション・アンプ』や、信号入力部と電力増幅部の『理想的なゲイン配分』、2並列回路の『MCS+』などにより、ノイズ性能を極限まで高めました。
また、従来のアキュフェーズパワーアンプと同じように、スピーカーケーブルを2組用意して、低域と高域で分けて使うバイワイヤリング接続や、パワーアンプを2台使用してのバイアンプ接続、ブリッジ接続等も可能ですので、将来的にスピーカーをグレードアップした場合などでも、ハイグレードなスピーカー駆動が可能です。

今回は当店のリファレンススピーカーである、B&W 802D4を鳴らしてみたいと思います。
プリアンプにはアキュフェーズのC-2900、CDプレーヤーはエソテリックのK-03XDの組合せで試聴スタートです。

いやあ、802D4が軽々と鳴り出しました。
まずはキース・ジャレットが1989年に八ヶ岳高原音楽堂で収録したハープシコードの演奏です。やはり802D4にはゆとりというか厚みがあります。最近は音出しに使っているスピーカーがEPOSのES14Nのことが多いのですが、このスピーカーも実にいいスピーカーなのですが、やはりブックシェルフスピーカーですので中低域の厚みには限界がありますので、フロア型の802D4との差は歴然とあります。これはスピーカーのグレードの差なので致し方ないことですが、こうした大型スピーカーを操れる「駆動力」というものを十分感じることができました。

ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」ではオーケストラの奥行感が田園風景の広がりを十分感じさせ、ハーモニーの美しさが印象的でした。
J.S.バッハの「トッカータとフーガ二短調」ではパイプオルガンの重厚な響きに圧倒されました。
シェフィールドの「Crème de la Crème」より「THE HIGHER YOU RISE」はゴキゲンなフュージョンサウンドですが、ドラムスのパンチとベースのタイトなリズム感が心地良く響きます。
ピアノとウッドベースのデュオによる「ミスター・ボージャングル」ではウッドベースの厚みとピアノの軽やかさのコントラストが見事なバランスでした。
カウントベイシー楽団の日本公演を収録した「Basie is Back」では、ライブ録音らしいステージ感とグルーブ感が素晴らしかったです。
どの音楽を聴いても、温度感のあるサウンドと空気感を感じました。純A級アンプらしい濃厚な音楽空間が楽しめます。

そこで、当店の常設展示のP-7500との比較をしてみました。
P-7500は純A級アンプではありませんので、当然のことながらA-80とは違いがあります。
具体的には「温度感」と「鮮度感」の違いということになりましょうか。
P-7500の方が温度感が低く、その分鮮度感が上がった印象になろうかと思います。

この音の違いは、「音色」の違いであって「クオリティ」の違いではありません。価格帯もほぼ同じですので、「性能の差」ではなくて、「性格の差」であることをご理解いただきたいと思います。つまりお聴きになる方の「好み」あるいは「嗜好」によって評価や選択が変わってきます。アキュフェーズとしてはA-80とP-7500という、性格の違う2種類のパワーアンプを用意することによって、お客様の製品選択を行いやすくしているわけですね。
アキュフェーズの場合は、どの製品も一定のレベル以上のクオリティを保った、オーディオ愛好家の気持ちに寄り添った製品で、いつも感心させられるのですが、パワーアンプのAシリーズとPシリーズのように動作方式の違うパワーアンプを複数ラインナップしているメーカーは少ないと思います。
今の世の中は、こうした趣味の世界の製品も価格高騰のあおりを受けて、マニア向けの高級品か、初心者向けの普及品かの2択になっています。アキュフェーズはマニア向けのメーカーですが、それでも中級モデルからハイエンドモデルまで、なかなかの充実のラインナップを誇っています。しかしアキュフェーズのスゴイところはそのラインナップの数ではなく、ラインナップの製品のいずれもが完璧な完成度を保っていて、故障率が極めて低いところです。不幸にして故障した場合でも同社のサービス部門は驚くべき完璧さで修理してくれます。また今年5月からは、MCカートリッジと業務用プロ機を除いて、アキュフェーズ全製品が5年間保証となりました。このあたりにも同社の自信と覚悟がうかがえます。こうしたユーザー第一主義を貫くアキュフェーズというメーカーの信頼性は頼もしい限りですね。